AIに正解を出してもらわない仕事の進め方

AIを仕事で使っている、と話すと、「文章を書いてもらっているんですか?」と聞かれることがよくあります。

もちろん、文章作成に使うこともあります。返信文を整えたり、記事の構成を考えたり、説明文を分かりやすくしたり。いわゆる生成AIらしい使い方です。

ただ、実際の仕事では、完成した文章や成果物を作ってもらうこと以上に、状況を整理したり、考えを深めたり、自分では気づけなかった視点を探したりするために使っています。

AIに正解を決めてもらいたいわけではありません。

むしろ、自分で判断するための材料を増やす。そのための相談相手やレビュアーとして、AIを使うことが多いです。

私が普段の実務でどのようにAIを使っているのか、参考になれば幸いです。

この記事でわかること

  • AIを文章作成などに使うだけでなく、仕事進め方や判断材料を増やすために活用する
  • メールやSlackの返信文を考える際には文脈や相手の状況を共有し、適切な返信を作成する
  • Web制作などの依頼内容が曖昧な場合もAIを活用し、要件整理や見落としを防ぐ
  • 別のAIに的確な指示を出すために、プロンプトを作成し、条件を明確化する
  • デザインやワイヤーフレームのレビューにもAIを活用し、異なる視点からの意見を取り入れる
  • AIを使うことで自分の判断材料を増やし、考える工程の比重が増える。情報の扱いにも注意が必要

SlackやBacklogのやり取りを共有して、返信文を考える

仕事ではメールだけではなく、SlackやBacklogなどでやり取りをする機会が多くあります。

何か質問を受けたときや、認識のずれを調整したいとき、相手のメッセージだけをAIに渡して「返信を考えて」と依頼しても、あまり良い文章にはなりません。

返信に必要なのは、目の前の文章だけではないからです。

これまでにどのような話をしていたのか。何が決まっていて、何がまだ決まっていないのか。誰が何を確認することになっていたのか。相手は困っているのか、確認したいだけなのか、それとも少し不満を感じているのか。

こうした文脈によって、適切な返信は変わります。

私は、必要に応じてBacklogの課題ページやSlackのやり取りを共有し、まず状況を整理してもらいます。

  • 「今、論点になっていることは何か」
  • 「認識が食い違っていそうな部分はあるか」
  • 「こちらから確認すべきことは何か」
  • 「この返信を受け取った相手は、どう感じそうか」

返信文を作る前に、こうしたことを一緒に確認します。

自分が少し感情的になっているときにもとても役に立ちます。

相手の書き方に引っかかったり、同じ説明を何度もして疲れていたりすると、文章が必要以上に強くなることがあるのです……。反対に、波風を立てたくない気持ちが強くなり、伝えるべきことまで曖昧になる場合もあります。

AIに第三者として読んでもらうことで、「少し強く見える」「ここは曖昧で、相手が判断できないかもしれない」といった意見をもらえます。

最終的に何を伝えるか、どの表現を使うかは自分で決めます。
ただ、一人で文章を考え続けるよりも、相手の立場を想像しやすくなります。

曖昧な依頼や要件を整理する

Web制作やCMSの案件では、最初から依頼内容が明確になっているとは限りません。

  • 「ページを追加したい」
  • 「もっと使いやすくしたい」
  • 「更新しやすい仕組みにしたい」

依頼としてはよくある言葉ですが、そのまま制作を始めるには情報が足りません。

誰が使うのか。何に困っているのか。なぜ今変更したいのか。今の運用のどこに負担があるのか。制作後に誰が更新するのか……。

同じ「ページを追加したい」という依頼でも、目的によって必要な対応はまったく異なります。

このような場合は、打ち合わせのメモや議事録、依頼内容などをAIに共有し、決まっていることと未決定のことを分けてもらいます。また、確認した方がよい項目や、前提として抜けている情報を洗い出してもらうこともあります。

自分でも要件整理は行いますが、案件に深く入り込むほど、分かっているつもりになっている部分が増えていきます。

第三者から見ると説明が足りないのに、自分の中では前提になっている。制作現場では、この状態が手戻りや認識違いにつながりやすいです。

AIの回答が正しいとは限りませんが、「その点は確認していなかった」と気づくきっかけにはなります。
答えを決めてもらうのではなく、見落としている問いを見つけるために使っています。

他のAIに渡すプロンプトを作ってもらう

少し変わった使い方かもしれませんが、私は別のAIを使うためのプロンプトをAIに作ってもらっています。

AIごとに得意なことや使いやすさは異なり、常にアップデートされるからです。

文章作成、コーディング、調査、画像生成など、目的に応じてツールを使い分けることがありますが、別のAIに的確な指示を出すのは意外と難しい……。

「いい感じに作ってください」では、こちらが期待する結果は出ません。

何を目的としているのか。どの情報を前提にするのか。どの形式で出力してほしいのか。やってほしくないことは何か。どの部分はAIに任せ、どの部分は人間が確認するのか。

こうした条件を言語化する必要があります。

私は、作りたいものや困っていることを普段使っているAIに伝え、別のAIに渡すためのプロンプトに整理してもらいます。

一度プロンプトを作り、実際に別のAIへ入力して、出力を確認します。意図と違っていれば、結果を共有してプロンプトを修正します。

これ関しては、単なる便利な裏技というより、要件定義に近い作業だと感じています。

AIに何をさせたいのかを明確にするためには、自分自身が目的や完成条件を理解していなければなりません。AIに指示するためにAIを使うことで、頭の中にある曖昧な希望を、実行可能な条件へ変換しています。

デザインやワイヤーフレームをレビューしてもらう

デザインやワイヤーフレームのレビューにもAIを使っています。作成した画面のキャプチャを共有し、情報の優先順位や導線、見出しの流れ、CTAの置き方などを見てもらいます。

  • 「初めてこのページを見た人は、何のページか理解できそうか」
  • 「次に何をすればよいか分かるか」
  • 「企業側が伝えたい情報ばかりで、ユーザーが知りたい情報が後回しになっていないか」
  • 「似た内容が重複していないか」

こうした観点でレビューを依頼します。

自分で作ったものを自分だけで確認していると、どうしても制作側の視点に寄ってしまい、なぜこの情報を入れたのか、どのような意図で並べたのかを知っている状態になっているので、初見の人が感じる分かりにくさに気づきにくくなります。

AIに見てもらうことで、自分では違和感を持たなかった部分を指摘されることも多々あります。もちろん、AIの指摘をすべて採用するわけではありません。

案件の事情やユーザー像、クライアントの意図を踏まえると、変更しなくて良い場合もありますが、ワイヤーフレームの段階で別の視点を入れることよって、デザインや実装が進んでから構造を変えるよりも修正の負担が小さくなる、というメリットは非常に大きいと感じています。

AIはデザインの正解を決める相手ではなく、見慣れてしまった画面をもう一度見直すためのレビュアーとして使っています。

共通しているのは、自分の判断を手放さないこと

返信文の作成、要件整理、プロンプト設計、デザインレビュー。
一見すると、それぞれ違う使い方に見えますが、私の中では「AIに完成品を丸ごと作ってもらうのではなく、自分が判断するための材料を増やしている」という点で共通しています。

AIは、もっともらしいことを言う場合があります。状況を誤解することもありますし、一般論としては正しくても、その案件には当てはまらないこともあります。なので、AIから返ってきた内容を、そのまま正解として扱うことはあまりありません。

違和感があれば理由を聞き、別の視点を出してもらい、自分の考えと比較します。AIを使うようになって、考えなくてよくなったわけではありません。

何を前提として伝えるか、何を任せるか、どこを自分で判断するかを以前より意識するようになり、作業そのものは速くなりましたが、考える工程そのものの比重は大きくなったと感じています。

情報の扱いも含めて、AI活用だと思う

実務でAIを使う以上、情報の扱いには注意が必要です。
私は業務利用を前提としたプランを利用していますが、とは言えすべての情報を共有して問題ないとは考えていません。

パスワードやAPIキーなどの認証情報、個人の連絡先、特に機密性の高い契約情報などは共有しませんし、クライアントとの契約や社内ルールによって、外部サービスへの入力が制限されている場合もあります。

実際の業務では、毎回すべての画面を完璧に加工することが難しい場合もありますが、だからこそ、何を共有して良いのかについては、意識する必要があると考えています。

特に記事やSNSで事例を紹介するときは、実務でAIに入力するとき以上に厳しく匿名化しなければなりません。便利に使うことだけではなく、情報をどう扱うかまで含めて、AI活用だと思っています。

AIは、考えるための相手になった

生成AIの使い方として注目されやすいのは、文章や画像、コードなどを作ってもらうことです。もちろん、それも便利な使い方です。

実務では成果物を作ってもらうこと以上に、状況を整理してもらう、別の見方を出してもらう、見落としを探してもらうといった使い方に助けられています。

私は、AIに正解を出してもらいたいわけではなく、自分だけでは気づけなかった問いを返してもらうことで、自身の判断の精度を上げたいと思っています。

仕事を代わってもらうためではなく、より深く考えるためにAIを使う。
今の私にとって、AIはそのような協業相手になっています。

Mimu Fujiwara

フリーランスのテクニカルPM/Webディレクター。 Webサイトのリニューアルや改善の相談を受ける中で、「本当に解決したいこと」と「依頼内容」が少しずれている場面によく出会います。 依頼されたものをそのまま作る前に、目的や課題、運用状況を整理し、「何を作るべきか」から一緒に考える立場で関わっています。 WordPressやHubSpotなどのCMS案件を中心に、要件整理・情報設計・技術調整・運用改善までを横断して支援。公開して終わりではなく、その後も無理なく運用・改善できる状態をつくることを大切にしています。