ユーザーとビジネスの間で揺れる話 ファーストビュー編
ユーザーがページを開いた最初の数秒で、続きを読むかどうかが決まる。
この重要性は、あらゆるプロジェクトで何度も耳にしてきました。とくにファーストビューは、文字通り“最初に目に入る場所”であり、そこでどんな情報を見せるか、どう伝えるかがページ全体の体験を左右します。
ただし、ファーストビュー設計では「何を載せるか」だけでなく、「どこまで言うか」「どこまで言わないか」というバランスも大事です。情報を詰め込みすぎれば読み飛ばされ、抽象的すぎれば理解されない。そのせめぎ合いに、毎回頭を悩ませることになります。
「伝えるべきこと」と「引きつけること」の間で
ファーストビューは、
- コピー
- ビジュアル
- ナビゲーション
- CTA(行動喚起)
が融合する複雑なエリアです。
ここに求められるのは、“すべてを説明すること”ではなく、“続きを見たくなる状態をつくること”だと思っています。
クライアントからは「キャッチコピーで全部説明したい」「事業内容がすぐ伝わるように詳細も入れたい」といった要望を受けることが多々あります。
気持ちはよくわかるのですが、すべてを詰め込んだファーストビューは情報過多となり、結果的にユーザーの理解を妨げてしまうことが多いように感じています。
ファーストビューに必要なのは「答え」ではなく「期待」を与えることです。続きを見たくなる感情や、もう少し知りたいと思わせる余白を残すことが重要です。
読ませるか、見せるか、感じさせるか
ファーストビュー設計での難しさは、テキスト・ビジュアル・構造の“密度”のさじ加減にもあります。
- コピーが長すぎると読まれない
- 短すぎると抽象的になってしまう
- 写真や動画は強い印象を与えるが、意図が伝わらないと逆効果
「説明」「印象」「行動喚起」のどれかに偏りすぎず、ユーザーが“受け取る余地”を残すことが求められます。
例:ECサイトのトップページ
高級感を出そうと美しいビジュアルだけを置いた結果、「何が売られているのかわからない」というフィードバックが寄せられたケースがあります。改善後は、商品の一部を見せつつ「期間限定セール」などの情報を添えることで、CTRが向上しました。
ファーストビュー改善のためのチェックポイント
- A/Bテストで効果検証する
キャッチコピーやビジュアルを変えて反応を比較し、数字で裏付けを取ります。 - 情報の優先順位を明確にする
伝えたいことを3つ以内に絞り、最も重要な要素を中心に配置します。 - 視線誘導を意識する
ユーザーの目線が自然にCTAやメインコピーに流れるようなレイアウトを心がけます。 - 余白を恐れない
余白は情報を際立たせ、呼吸感を生みます。すべてを埋める必要はありません。 - デバイス別に最適化する
スマホとPCでは視界の広さや操作感が異なるため、それぞれで見やすい構成を考えます。
ファーストビューは“全体の入口”であり“行動の起点”
ファーストビューは単なる見た目の問題ではなく、体験の質そのものに直結します。訪問者が「この先を見たい」と思えばスクロールし、商品ページや問い合わせフォームへと進みます。逆に最初で興味を持てなければ、そこで離脱してしまいます。
業種やブランド、訪問タイミングによって正解は変わるため、毎回手探りです。それでも、「このサービス、ちょっと気になるかも」と思ってもらえるデザインを目指し、一つひとつ丁寧に作り込むことが、長く愛されるサイトづくりにつながります。
まとめ
- ファーストビューは答えを出す場所ではなく、期待を作る場所
- 情報量と余白のバランスが鍵
- ユーザーの行動を起こす起点として設計する
最初の数秒で心をつかむことは簡単ではありませんが、その効果はサイト全体の成果に直結します。だからこそ、目先の説明よりも「続きを見たい」と思わせる設計を大切にしていきたいです。