ユーザーとビジネスの間で揺れる話 トップページ構成編
トップページは、第一印象を決める場所。訪れたユーザーが「どんなサービスか」「自分に関係あるか」「信頼できそうか」を、ほんの数秒で判断します。だからこそ、あれもこれも載せたくなる気持ちは私にもよくわかります。でも、すべてを詰め込んだ結果、本当にユーザーのための構成になっているかというと、そうとは限りません。
ビジネスの「見せたい」とユーザーの「知りたい」のズレ
事業紹介、サービス一覧、実績、最新情報、採用情報、問い合わせ──企業が見せたい情報は山ほどあります。でも、ユーザーが最初に求めているのは、その一部だけかもしれません。
欲張って全部並べると、逆に「何を見ればいいのかわからない」「どこを押せばいいかわからない」状態になりがち。見た目は充実しているのに、肝心の情報にたどり着けない──そんな経験が、使う側としてもあるはずです。
「誰に」「何を」届けるかを決める勇気
トップページは、誰にでも何でも案内する掲示板ではなく、想定する訪問者のニーズに沿って導線を始める場所です。最初の表示で「ここは自分に関係ある」と思ってもらえるかどうかが勝負です。
そのためには、あえて情報を削る勇気も必要です。すべて載せるより、「この人にこれを伝える」という優先順位を決めた方が、結果的に伝わりやすくなります。
構成に「動機形成」の流れを
単に情報を並べるのではなく、「なぜここにこの情報があるのか」というストーリーを作ることで、一貫性が生まれます。
- 実績や事例を先に見せて信頼を得る → サービス説明へ誘導
- ファーストビューで特徴を伝える → 興味のあるカテゴリにすぐ進めるボタンを置く
こうした流れは、ユーザーが迷わず動ける“納得感のある物語”になります。
実際にあった構成の失敗と改善
あるサービスサイトのリニューアルで、クライアントから「この情報も」「あの情報も」と多くの要望を受け、ファーストビュー下にカテゴリリンク、その下に実績、その横にキャンペーン…と、にぎやかだけど焦点がぼやけたページになってしまいました。
ABテストで構成をシンプルにし、まずは「どんなサービスか」を短く伝える流れに変更。結果、滞在時間とCV率が改善し、伝える情報を減らした方が成果に結びつくことを実感しました。
制作者に求められる説明力
クライアントは「全部載せたい」と考えるものですし、それは自然な欲求です。でも、載せることと伝わることは別問題。だからこそ、制作者は「なぜ削るのか」「なぜこの順番なのか」を言葉で説明し、納得してもらう必要があります。
おわりに
トップページは企業の顔であり、ユーザーとの最初の接点です。そこに何を載せ、どう配置するかは、ビジネスの意図とユーザーの心理、ブランドの姿勢を映し出します。
「伝えたい」と「知りたい」の間で揺れながらも、迷いのない第一歩をつくる構成を──それが、使う人にも運営側にも納得感のあるトップページにつながると感じています。