【フリーランス体験談】指示が二転三転、責任者は誰?初期に経験した“案件地獄”
フリーランスとして独立して間もない頃は、案件の良し悪しを見極めるノウハウも十分に身についておらず、誰しもが手探りで仕事を受けていくものだ。そんな中で出会ったある案件は、今もなお記憶に残るほどの混乱とストレスに満ちていた。
率直に言えば、「二度と関わりたくない」と思わせるほど、企業側の対応は無責任で杜撰だった。
未経験ディレクターとのすれ違いと、その先にあった限界
用語が通じない、基本的な認識のズレ
案件にアサインされた時点で、違和感はうっすらあった。
担当ディレクター(仮に担当者Aとする)はWebディレクションの未経験者で、こちらの質問に対するレスポンスも曖昧。 「ファーストビュー」「メインビジュアル」など、Web制作ではごく一般的な用語が通じず、そのたびに会話が止まってしまう。
Aが作成したワイヤーフレームに沿ってデザインを進めていたが、そもそもサイト構造として欠けている要素が多く、確認しなければならない点が格段に増えていった。
指示の意図も曖昧で、何度も確認を重ねたものの、肝心な部分にはなかなかたどり着けない。次第に、「この人、本当に理解しているのだろうか」という疑念が募っていった。
業務外の教育負担、そして深夜の電話
それでもなんとかやり取りを重ねて進めようとしたが、限界はすぐに訪れた。
業務の中でディレクターの指示内容を補完するだけでなく、基本的な業務理解をサポートする場面も多くなっていった。だが、教育は契約に含まれていないし、そもそもフリーランスが担うべき役割ではない。
やむを得ず、ディレクターの変更を申し出たところ、当初は「それは難しい」と渋られた。それでも状況の深刻さを伝え、交渉を重ねていたある日の深夜2時、突然、電話が鳴った。発信者はその担当者だった。
「すみません、今(⁉)少しだけ話せますか?」
あまりに非常識な時間帯の連絡に驚きつつも対応すると、その場でようやく「私(B)がディレクションを引き継ぐ方向で進めます」と告げられた。
思い返せば、この深夜の電話の時点で、すでに“普通ではない案件”だったのかもしれない。
担当者BとC、食い違う“二重指示”の混乱
その後はBの指示をもとに作業を進め、大きな混乱もなく業務が進行した。
しかし数日後、クライアントへの確認に備えて、別の担当者であるCに進行中のサイトを確認してもらったところ、事態は再び急転する。「これではクライアントに見せられるクオリティではない」とCが言い出したのだ。
しかもその上で、使用しているWordPressテーマの仕様を無視した構造やデザインを指示し始める。Bとの方針とは明らかに異なる内容であり、仕様から逸脱していることを伝えても、Cは「それでもクライアントの意向だから」と譲らなかった。
Bの指示で進めたものをCが否定し、Cの修正案はテーマに適合しない──どちらを優先すべきかも曖昧なまま、こちらは毎回、板挟みになった。
それでも何とかCの指示に従って調整を重ね、ようやく公開・納品に漕ぎつけた。
公開直前に判明したDNSトラブル
事前に共有されていたサーバーにデータをアップし、最終確認を進めていたところで、また新たな問題が発覚する。サイトの移管作業がうまく行われておらず、DNS認証が完了していなかったのだ。
公開予定はその日中。すぐにCに連絡を入れ、どう対処すればよいかを再三問い合わせたが、なぜか返信は深夜まで返ってこなかった。焦りと苛立ちの中、ただただ待たされるしかなかった。
返信も指示もなく、企業側の対応に誠意の欠片すら見出せなかった私は、翌朝早々に辞退の連絡を入れた。「報酬を支払えないけど構わないか」という確認に、さすがに一瞬イラッとしたが、関わりたくない気持ちが勝ったため、それで良いと返事を送った。
今振り返って思うこと
この件は、今でも「かなりイレギュラーなケースだった」と思いたい。が、同時に、この経験から学んだことは大きい。
- 担当者が複数いる場合、指示系統の確認は最優先
- 誰が最終判断者なのか、曖昧なまま進めてはいけない
- 未経験者のサポートを任されるような構造の場合、それを最初に明示されていない時点で赤信号
相手の体制に問題があったとはいえ、私にも「確認を怠った点」があったことは否めない。 それ以来、「誰が決裁権限を持っているか」「ディレクションの経験値はどの程度か」「指示は一元管理されているか」などは、必ず受注前に確認するようになった。
あとがき
「どう考えてもおかしい」案件に出会ったとき、ようやく“正常な案件”のありがたみを知る。 これは、そんな“目が覚めるような失敗”の記録だ。