【フリーランス体験談】フリーランス新法時代に、旧来型エージェントモデルは通用するのか
はじめに|「条件が悪かったから」ではない違和感
フリーランスとして仕事をしていると、単価や稼働時間について悩む場面は少なくありません。私自身も、これまで何度も条件面で悩み、交渉し、折り合いをつけてきました。
ただ、今回エージェント経由の契約を終了する判断に至った理由は、単価が低かったからでも、仕事量が多かったからでもありませんでした。
違和感の正体は、「判断できない状態に置かれ続けること」でした。
本来は契約を継続したいと考えていましたし、クライアントとの関係性や業務内容にも大きな不満はありませんでした。それでも最終的に終了を選ばざるを得なかったのは、エージェントとの信頼関係が成立しなくなったからです。
この記事では、個人の体験をもとに、フリーランス新法時代におけるエージェントモデルの課題について考えてみたいと思います。
この記事でわかること
- フリーランス新法は、フリーランスと発注者の情報非対称性を是正することを目的としている
- 旧来型エージェントモデルでは、交渉や情報共有が不十分でフリーランスが判断できる状態にない場合がある
- エージェントの収益モデルが構造上、フリーランス側の不利益を吸収することになっている場合がある
- フリーランスが条件が悪くても契約を続ける理由は、信頼できる調整役が不在だからである
- フリーランス新法時代に求められるエージェントは、交渉過程を可視化し、判断に必要な情報を提供し、信頼を守ることが重要である
- フリーランスが不利な構造を可視化し、個人が自ら判断する材料を提供することが重要である
フリーランス新法が前提にしているもの
フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスと発注者の間にある情報や立場の非対称性を是正することを目的としています。
重要なのは、単に報酬を守ることではありません。
「対等な立場で判断できる状態をつくる」ことが前提に置かれている点です。
- 条件について説明を受けられること
- 交渉の可否や時期が明確であること
- 判断に必要な情報が共有されること
これらが担保されて初めて、フリーランスは自分の意思で「続ける/やめる」を選べます。
現場で起きている旧来型エージェントモデル
一方で、現場では旧来型のエージェントモデルが依然として多く残っています。
私のケースでは、以下のような状況が続きました。
- 単価交渉は「1年以上継続してからでないと対応できない」とされていた
- 交渉の前提となるヒアリングやキャッチアップが行われない
- 進捗や見通しについて定期的な共有がない
- 回答時期が「初旬」など曖昧なまま時間だけが経過する
結果として、交渉そのものよりも、「いつ・何が・どこまで進んでいるのか」が分からない状態が長く続きました。
規約上は正しいが、実務上は不誠実になる瞬間
エージェント側の対応は、規約上は問題ないのかもしれません。
ただ、実務の視点で見ると、別の問題が浮かび上がります。
- 規約を理由に説明や判断を先送りする
- 主体的に調整せず、クライアントからの反応待ちに終始する
- 結果としてフリーランスだけが拘束され続ける
「規約を守っていること」と「誠実に対応していること」は、必ずしもイコールではありません。
なぜフリーランスを守らない構造が生まれるのか
この問題は、個人の対応力だけでは説明できません。
エージェントの収益モデルそのものが、フリーランス側の不利益を吸収する構造になっているケースもあります。
- 調整コストはフリーランスが耐える前提
- 交渉が長引いても損失は発生しにくい
- 契約を切られない限り現状維持が合理的
こうした構造の中では、信頼形成よりも自社都合が優先されやすくなります。
なぜ「条件が悪くても辞めなかった」のか
誤解を避けるために補足すると、私は条件が悪いから即座に辞める判断をしたわけではありません。
- クライアントとの関係性は良好だった
- 業務内容にも納得感があった
- 改善の余地があるなら続けたいと考えていた
それでも辞める判断に至ったのは、「信頼できる調整役が存在しない」と感じたからです。
契約終了を選んだ判断軸
最終的な判断軸はシンプルでした。
- 説明責任が果たされていない
- 判断材料が揃わない
- 改善の兆しが見えない
感情的な理由ではなく、構造的に限界だと判断しました。
フリーランス新法時代に求められるエージェント像
これからのエージェントに求められるのは、単なる仲介ではありません。
- 交渉結果だけでなく過程を可視化すること
- 判断に必要な情報を揃えること
- フリーランスとクライアント双方の信頼を守ること
その役割を果たせないモデルは、いずれ選ばれなくなるでしょう。
おわりに|「辞めた理由」を記録する意味
この記事は、特定の企業や個人を批判するものではありません。
同じような立場に置かれた人が、自分で判断するための材料を残すこと。
それが、この体験を言語化した理由です。
フリーランスが静かに不利になる構造を、少しでも可視化できれば幸いです。
※本記事は筆者の体験をもとにした構造的考察であり、特定の企業・個人を非難するものではありません。