“伝える”から“構造化する”へ これからのWeb制作者に求められる思考
現場では、指示も確認もチャットで済むようになりました。
SlackやBacklogの通知が絶え間なく届き、リアルタイムで反応できることが当たり前になっています。
しかし、そのスピードの裏で、情報が抜け落ちたり、誤解が生まれたりする場面も少なくないように感じます。
「言った・言わない」「どこに情報があるのかわからない」──そんな混乱を目にする機会が増えています。
かつては「伝える力」が重視されていましたが、今では「情報を構造化して共有する力」がより重要になってきているように思います。
この記事でわかること
- チームコミュニケーションがチャット中心に移行し、情報の分散や渋滞が発生している
- チーム内での情報共有において、情報を構造化して整理する力が求められている
- チャットは情報の流れ場、ドキュメントは情報の残り場として使い分けることが重要
- Web制作者に必要な力として要約力、文脈設計力、環境構築力が挙げられる
- 新しいコミュニケーション能力として、情報の構造を設計できる力が重要視されている
- 伝わる言葉よりも理解される構造を描くことがWeb制作者にとって重要である
かつてのWebディレクター・デザイナー像
以前のWeb制作現場では、ディレクターは“ハブ”としてチームをまとめ、デザイナーは“職人”としてアウトプットに集中することが多かったように思います。
ディレクターはクライアントとの調整役として「いかに伝えるか」を磨き、デザイナーは与えられた要件を形にすることに専念していました。
その頃は「対話」がコミュニケーションの中心だったのではないでしょうか。
会議や口頭でのすり合わせが多く、相手の表情やトーンからニュアンスを読み取ることができました。
誤解があっても、直接話すことで解消できたのです。だからこそ、情報を“構造化する”必要性は強く意識されていなかったのかもしれません。
しかし、リモートワークや非同期コミュニケーションが一般化した今、状況は大きく変わりつつあります。
チャット中心の時代に起きた“伝達の分散”
SlackやChatworkでのやり取りが増えるほど、情報が分散してしまう傾向があります。
「報告・相談・共有」がすべてチャットの中に流れ込み、重要な情報が他のメッセージに埋もれてしまうことも珍しくありません。
通知が多すぎて追いきれなかったり、スレッドが乱立してどこに何があるのかわからなくなったり。
一度共有した内容を、再び誰かが聞き直すという状況もよく見られます。
そんな“情報の渋滞”が起きているチームも少なくないのではないでしょうか。
実際、Backlog・Slack・Notionといった便利なツールを導入していても、目的や役割を明確にせずに使っている企業は多いように感じます。
Backlogはチケット管理、Slackは即時コミュニケーション、Notionは知識の蓄積──
それぞれの意図を区別しないまま、すべてを「とりあえず共有の場」として使ってしまうと、結局どこにも情報が整理されません。
ディレクターが把握していても、制作者から見れば「どこに何があるのか分からない」状態になることもあります。
こうした状況では、ツールの便利さよりも、“構造の欠如”が混乱の要因になっているように感じます。
いま求められるのは「情報を構造化する力」
だからこそ今、Web制作者に求められているのは、「伝える力」ではなく「構造化する力」。
単に情報を送るのではなく、
- 何のための話なのか(目的)
- どのような背景があるのか(前提)
- 次に何をすべきなのか(手順)
といったポイントを整理して伝える意識が求められています。
チャットは“流れる場”、ドキュメントは“残す場”と捉えることが大切です。
この2つをどう使い分けるかによって、チームの生産性が大きく変わってくるように思います。
Notionで要件や決定事項を記録し、Slackでは進行中のやり取りだけを扱う。
FigJamで構造を可視化し、スプレッドシートでタスクを整理する。
ツールそのものよりも、「情報の流れをどう設計するか」という視点が大切になってきているように感じます。
「伝える側」と「受け取る側」の境界がなくなる
フリーランスやハイブリッドチームでは、立場が固定されにくいものです。
あるときはディレクターとして指示を出し、あるときはデザイナーとして指示を受けることもあります。
「伝える側」と「受け取る側」が入れ替わる場面が多いからこそ、“自分以外が理解できる形”で情報を整理できる人が信頼されやすいのではないでしょうか。
情報を構造化できる人は、どんな立場にいてもプロジェクトを前に進めやすくなります。
それは、単なるスキルというよりも、チーム全体の“思考の質”を高めるための力といえるかもしれません。
これからのWeb制作者に必要な3つの力
1. 要約力
膨大なチャットや会話を整理し、要点だけを抽出する力です。
「背景」「目的」「結論」を一文でまとめられる人は、どんなチームでも重宝されやすいと感じます。
2. 文脈設計力
情報をどの位置に置くか、どう関連づけるかを考える力です。
単発の共有ではなく、「この話は全体の中でどの文脈に属しているのか」を意識することで、
受け手が理解しやすくなるのではないでしょうか。
3. 環境構築力
情報が自然と集約される仕組みを整える力です。
Notionやスプレッドシートの“正しい置き場”を決め、誰もが迷わずアクセスできる状態をつくることが理想です。
環境を整えることは、チーム全体の認知負荷を下げることにつながると思います。
まとめ
「伝える力」だけでは、十分とはいえない時代になってきました。
複数の人が、複数のツールを使い、非同期で動く今の制作現場では、“情報の構造を設計できること”が、新しいコミュニケーション能力の一つといえるのかもしれません。
どれだけ良い提案をしても、情報が流れ去ってしまえば意味が薄れてしまいます。
どれだけ優れたデザインを作っても、背景が共有されなければ再現性を保つのは難しいでしょう。
これからのWeb制作者に求められるのは、「伝わる言葉」よりも「理解される構造」を描くこと。
それは、混沌とした情報の海を整理し、チームを前へ進めるための一つの思考のあり方だと感じます。