フリーランスが地獄を見る「曖昧クライアント」の話 ── 頑張っても報われない案件には、共通点がある

フリーランスが地獄を見る「曖昧クライアント」の話 ── 頑張っても報われない案件には、共通点がある

努力ではどうにもならない案件が、確かに存在する

フリーランスを始めたばかりの頃、「どんな案件でも、ちゃんと向き合えば何とかなる」と思っていました。

実際、スキルが足りないなら勉強すればいいし、説明が足りないなら丁寧に補えばいい。
そうやって乗り越えてきた案件もたくさんあります。

でも、どうしても例外がありました。
どれだけ丁寧にやっても、どれだけ時間をかけても、なぜかずっと噛み合わない案件です。

あとから振り返って分かったのは、それらの多くが「曖昧さ」を抱えたまま走り出していた、ということでした。

この記事でわかること

  • フリーランスが努力しても解決できない案件が存在する。
  • クライアントとのコミュニケーションで「きれいにしたい」という言葉の曖昧さが問題になることがある。
  • 案件で決定権者や進行状況が不明確なまま進むとトラブルが生じる可能性がある。
  • 社内での合意形成が不十分なまま進めると、後で設計や前提が崩れることがある。
  • フリーランスを安くて便利な代替として見る姿勢が、要件整理やディレクションの不足を引き起こすことがある。
  • エージェント経由の案件でも、クライアントの意思決定構造や社内の状況が把握されずにトラブルが発生することがある。

「きれいにしたい」という言葉の怖さ

「サイトをきれいにしたいんです」
この言葉を最初に聞いたとき、私は前向きに受け取っていました。

でも実際に進めてみると、“きれい”の意味が人によって違いすぎる、という壁にぶつかります。

  • デザインの話なのか
  • 情報整理の話なのか
  • 成果(問い合わせ・採用)の話なのか

ここが共有されていないまま進むと、完成しても「なんか違う」という感想だけが残りがちです。

悪気があるわけではなく、言葉がふわっとしすぎているだけ。
それが、後々のズレを生みます。

誰が決めているのか分からないまま進む案件

打ち合わせでは話が通じている。
進行もスムーズ。
なのに、最後の最後で話がひっくり返る。

理由を聞くと、
「上の確認が入りまして」「別の人の意見が出まして」。

このパターン、かなり消耗します。

最初から悪意があるわけではなく、単に決定権の所在が整理されていないことが多いんですよね。

誰が最終的にOKを出すのか。
その人は、どのタイミングで関与するのか。

ここが曖昧なままだと、どれだけ途中が順調でも、安心はできません。

社内で話がまとまっていないまま走り出す

担当者の熱量は高い。
「早く進めたい」という気持ちも伝わってくる。

でも途中から、
「別部署の意見が出てきて…」
「社内で少し認識が違っていて…」
という話が増えてくる。

この状態だと、最初に立てた設計や前提が、後から崩れていきます。

フリーランス側が悪いわけではありません。
ただ、まだ社内で合意形成が終わっていない段階だった、というだけです。

「任せます」と言われたのに、任せてもらえない

「全部お任せします」
この言葉を聞くと、少し安心しますよね。

でも進めていくうちに、
「やっぱりこっちのほうが…」
「もう少しこうできませんか?」
と細かい修正が増えていくことがあります。

多くの場合、相手は決して意地悪をしているわけではありません。

ただ、
「自分では決めきれない」
「完成形を見てから判断したい」
という状態なだけだったりします。

このズレに気づかないまま進むと、“任されているようで、実はずっと探り合い”になります。

フリーランスを「安くて便利な代替」として見ているケース

制作会社を通さず、フリーランスに直接依頼する。
それ自体は、まったく問題ありません。

ただし、ディレクションや要件整理の価値まで軽視されていると、後から認識のズレが大きくなります。

「安く頼んだのに、思った通りにならない」
「なんでこんなに時間がかかるの?」

こうした不満が出てくると、もう軌道修正はかなり難しいです。

「エージェント案件だから安心」とは限らない

もうひとつ、個人的に強く感じていることがあります。
それは、エージェント経由の案件だからといって、必ずしも安全とは限らないという点です。

エージェントが入っていると、

  • 条件が整理されていそう
  • クライアントがまともそう
  • トラブルが起きにくそう

そんな印象を持ちやすいと思います。
実際、一定のフィルターがかかっているのは事実です。

ただ、エージェントが見ているのは
「契約条件」や「稼働条件」が中心で、現場の意思決定構造や社内の温度感までは把握しきれていないことも少なくありません。

結果として、

  • 目的が曖昧なままスタートする
  • 決定権者が途中で出てくる
  • 社内調整が終わっていない状態で投げられる

といった“構造的な曖昧さ”が、そのまま流れ込んでくることがあります。

エージェントは守ってくれる存在ではありますが、現場で起きるズレを完全に防いでくれる存在ではない、という認識は持っておいた方がいいと感じています。

だからこそ、エージェント案件であっても、

  • 誰が決めるのか
  • 何をゴールにしているのか
  • どこまでが自分の役割なのか

このあたりを自分の言葉で確認することは、とても大切です。

見抜く力は、自分を守る力でもある

曖昧なクライアントとのトラブルは、誠実さや努力だけでは解決できないことがあります。
だからといって、誰かを責める話でもありません。

ただ、「この案件、まだ走り出す準備が整っていないかもしれない」と気づけるかどうかで、消耗度は大きく変わります。

案件を選ぶことは、逃げではありません。
自分の時間や集中力を守るための、必要な判断です。

もし今、「なんとなくしんどい」「ずっと噛み合わない」そんな感覚があるなら、それはスキル不足ではなく、構造の問題かもしれません。

同じように悩んでいる人にとって、この話が少しでも判断のヒントになれば嬉しいです。

Mimu Fujiwara

フリーランスのWebディレクター/デザイナー。 職種にとらわれず、プロジェクトの状況に応じて「判断と整理」を担う立場で関わっています。 要件定義や情報設計を起点に、UI設計・CMS構築・運用改善まで一貫して対応。 見た目を整えることよりも、「なぜそうするのか」「どうすれば無理なく回るか」を大切にしています。 アクセス状況や利用実態などの数字も判断材料として扱いながら、制作を“納品で終わらせない”改善パートナーとして伴走しています。