【フリーランス体験談】「期待しすぎました」と言われた日|ズレた案件のリアル
フリーランスとしての仕事に少しずつ慣れ始めていた昨年の秋。ようやく自分のスタイルが定まりつつあり、「そろそろ次のステップへ」と思っていた矢先に出会った、とある案件がある。
企業として出会ったこの会社は、面接時には非常に好意的な姿勢を見せてくれていた。
「即戦力としてすぐに来てほしい」「右腕としてディレクション業務を任せたい」「正社員登用も前向きに検討している」といった発言が並び、期待されているのは分かったが、実はその温度感に少し不安を覚えていた。まだ一緒に働いてもいないのに、そこまで前のめりな姿勢に、違和感のようなものが残ったのを覚えている。
結果から言えば、面接時に抱いていたイメージと、実際の現場との間には大きなギャップがあった。「あの時点でもっと具体的に確認しておくべきだった」と、後になって強く感じることとなった。
目次
面接時に勝手にふくらんだ“期待”
案件のスタートは順調だった。クライアントとのやり取りもスムーズで、開発担当者との連携にも手応えを感じていた。
しかし、案件開始から数週間が経ったある日、面接で対応してくれた社長から突然こんな言葉をかけられた。
「すみません、ちょっと期待しすぎてました」
驚きと同時に、強い違和感を覚えた。「期待に応えられていないのかもしれない」と焦る一方で、「そもそも期待とは何だったのか?」という疑問が浮かんだ。
面接時には具体的なスキルチェックやすり合わせはほとんどなく、むしろ雑談に近い雰囲気の中で案件が決まったという印象だった。にもかかわらず、実務が始まると「このレベルのアウトプットが欲しかった」と後出しされる。
この時点で、社長が抱いていたイメージと、自分の実力やスタンスとの間にズレがあったのは明らかだった。
“チームで作る”と思っていたのに、実態は違った
また別の案件では、チーム内で仕上がったものを一度社長に確認してもらうフローがあり、長くその会社で働いている担当者と、壁打ちやディスカッションを重ねながら設計を進めていくものだと思っていた。
しかし、その担当者は、私が一人で判断して制作したものをそのまま社長に提出するつもりでいたらしい。これまでの経験上、独断で進めたことはなく、私自身も一度相談したい気持ちがあったため、そのリアクションにはかなり困惑したのを覚えている。
最終的に「このままじゃ社長に見せられません」と言われ、案件はその担当者に巻き取られてしまった。
結局、社長や他のメンバーとのコミュニケーションをどう図ればよかったのか、最後まで掴めないままだった。
今振り返って思うこと
この案件を振り返って思うのは、事前のすり合わせと、案件側の体制・文化の把握がいかに重要かということだ。
クライアントとの調整や開発担当者との連携には一定の手応えがあったものの、全体を通して社長や他のメンバーとの距離感がつかめず、意思疎通が成立しないまま終わってしまった印象が強い。
- どのような進め方をしているのか
- どれくらいの裁量を期待されているのか
- どこまでのクオリティやアウトプットが求められているのか
こうした点を契約前にもう少し深く確認していれば、参画するかどうかの判断も変わっていたかもしれない。
特に、「能動的に動いてほしい」という期待をフリーランスに求めすぎる傾向がある現場では、事前に「何を期待されているのか」をきちんと聞き出しておく必要がある。
現在は、そうしたスタンスを持つ会社自体を避けるようにしている。自分の責任で動くというのは当然だが、それが“丸投げ”にならないよう、線引きはしっかりすべきだと痛感している。
あとがき
「期待しすぎました」という言葉は、今振り返っても強く印象に残っている。業務委託という関係性のなかで、企業の代表からそう言われることの重みや一方的な印象に、当時は戸惑いを隠せなかった。
チームで動いているように見えて、実は孤立している。 そんな“見えないギャップ”に苦しんだフリーランス初期の一件だった。