AIを業務にどう馴染ませるか ― ChatGPT・Cursor・NotebookLMを活用した制作現場の実践法

AIツールが次々と登場し、制作の現場でも「どれをどう使えばいいのか分からない」という声をよく耳にします。特にWeb制作やコンテンツ制作では、単なる自動化ではなく、“思考や判断の補助”としてAIをどう取り入れるかが問われています。

この記事では、実際にChatGPT・Cursor・NotebookLMを使い分けながら仕事をしている制作者の視点から、「AIを業務に自然に馴染ませる方法」を紹介します。効率化だけでなく、発想や構成の質を高めるヒントとして、参考になれば幸いです。

ツールは「置き換え」ではなく「補助」

AIを導入する際、最初に意識しておきたいのは「AIは人を置き換えるものではない」ということです。AIの出力は確かに速く、膨大な情報を短時間で処理できますが、判断や意図までは代替できません。制作の現場では、AIを“手を動かす仲間”としてどう活かすかが重要です。

「作業効率化」という言葉は便利ですが、それだけに目を向けると本質を見失います。大切なのは、AIに任せる領域と、自分で考える領域を整理すること。そして、その接点となるのが「プロンプト設計」です。曖昧な指示ではAIも迷走してしまうため、何を求めているのかを具体的に伝える力が求められます。

AIは“考えるための補助線”です。AIが示した結果をもとに、「自分はどう感じるか」「どの方向に進むべきか」を考える。その往復が、AI時代の制作者にとっての思考プロセスといえます。

ChatGPT：思考の壁打ちと構成整理

ChatGPTは「アイデア出し」「構成整理」「仮説の検証」に最も適しています。記事の企画や提案書づくりの初期段階で、「何を伝えたいのか」「どんな構成が良いのか」を壁打ちしながら考えるときに役立ちます。

公式サイト：https://chatgpt.com/

たとえば、漠然と「アクセス解析の改善提案について書きたい」と思った場合でも、ChatGPTに「どんな構成が考えられる？」と尋ねるだけで、複数の視点を提示してくれます。それをたたき台にして、自分なりに取捨選択する。つまり、“思考の整理役”として使うのが効果的です。

また、出力された文章をそのまま使うのではなく、「自分の意図とずれていないか」を確認する姿勢が大切です。AIは文脈を理解しているようでいて、あくまで確率的に文章を組み立てています。出力を見て違和感を覚えたら、それこそが“考えるべきポイント”です。

Cursor：開発環境に自然に溶け込むAI

開発者やフロントエンド制作者にとって、Cursorは“新しい作業パートナー”です。Visual Studio Codeと似たUIを持ち、AIがリアルタイムでコード補完や提案を行ってくれます。

公式サイト：https://cursor.com/ja/home

特に「コードのリファクタリング」「エラー原因の特定」「別環境（Dockerなど）での設定修正」など、作業の流れを止めずに進めたい場面で力を発揮します。通常なら調べながら進める時間を、Cursorは会話ベースで短縮してくれるのです。

ただし、注意点もあります。AIが生成するコードは“動く”ことを優先するため、最適化や保守性の面では不十分な場合があります。導入時は「生成 → 動作確認 → 改良」という流れを意識し、あくまで人の最終判断を通すことが前提です。

また、GitやDockerなどの環境下では、誤ったパスや設定を提示することもあります。そのため、「信じすぎない」姿勢が大切。Cursorは“補助エンジン”として使いこなすことで、開発スピードを最大化できます。

NotebookLM：情報整理とナレッジ構築

NotebookLM（旧称：Project Tailwind）は、ドキュメントベースのAIツールとして注目されています。Googleドライブ上の資料やメモ、議事録などをまとめて読み込ませることで、AIが要約・関連付け・検索を行ってくれる仕組みです。

公式サイト：https://notebooklm.google.com/

制作現場では、長期案件や複数クライアントを担当している人に特におすすめです。過去の提案書や打ち合わせメモをNotebookLMに取り込み、「以前の類似案件ではどうしていたか」を即座に参照できるようにしておく。いわば“自分専用の知的アーカイブ”を作る感覚です。

重要なのは、「情報を溜める」ことではなく「引き出しやすくする」設計です。NotebookLMは、単なるメモの集積ではなく、思考を再利用するための仕組みづくりに活かせます。チームで共有すれば、社内のナレッジベースとしても機能し、個人の記憶を越えた“チームAI”を形成できます。

まとめ：AIは「考える力」を拡張するツール

AI活用のゴールは“効率化”ではなく、“思考の拡張”です。ChatGPTでアイデアを整理し、Cursorで実装スピードを上げ、NotebookLMで知識を体系化する。この3つを適材適所で組み合わせることで、制作の質とスピードを両立できます。

AIはまだ発展途上の技術ですが、人の発想や判断を支援する存在として確実に進化しています。大切なのは、「AIに頼る」ではなく「AIと共に考える」姿勢です。AIを正しく馴染ませることで、制作の現場はもっと柔軟で、創造的な場所になっていくはずです。