UX改善にAIをどう使う?課題発見から実装までをスムーズにする共創術
生成AIの話題になると、どうしても「デザインを描いてくれる」「ワイヤーを作ってくれる」みたいな“ビジュアル”の部分に目が行きがち。でも実際の制作現場では、UIを整えるだけでユーザー体験が劇的に良くなるわけではない。
今、AIが影響を与えているのは、むしろ“整えたあと”の話。 「どこをどう改善すべきか」「何がボトルネックになっているか」といったUX設計や分析の部分にこそ、AIの力が効いてきているように思う。
この記事では、AIを活用したUX改善の流れと、それに関わる制作者の立ち位置について、実務寄りの目線で整理してみる。
分析から改善へ、AIが見せてくれる兆し
セッションリプレイやヒートマップを眺めていて、「ここで離脱が多いのはなぜだろう」と考え込んだ経験、誰しもあるはず。最近はこうしたログデータをAIが要約して、「クリック率が異常に低いボタン」や「スクロールされにくいコンテンツ」などを提示してくれる機能が増えている。
たとえば、GA4と連携して“見られていない”セクションを洗い出したり、特定の導線でのコンバージョン率の低さを自動検知したり。人の目だけでは拾いきれない細かな違和感や兆しを、AIが拾ってくれるようになってきている。
UIの「改善パターン」を提案してくれる時代
改善案のアイデア出しに詰まることは多い。 「このバナー、目立たせたいけどどうすればいい?」「このCTA、本当にこの位置でいい?」といった疑問に対し、AIが過去のデータやトレンドを踏まえて複数パターンを提示してくれるようになってきた。
中には、そのままA/Bテストに展開できるUIのバリエーションを自動生成してくれるツールもある。UXの課題発見から、UIの改善提案、実装への橋渡しまでが、だいぶなめらかになってきている。
「作って終わり」じゃなく「育てる前提のデザイン」へ
FigmaやSTUDIOのようなツールでも、最近は“AIによるUI案の生成”が実装されてきていて、ちょっとしたパーツやレイアウトの叩き台をAIに作ってもらうこともできるようになった。
ただ、重要なのは「その案がなぜいいのか」「本当にユーザーにとって有効か」を自分たちで問い直すこと。AIが出したものをそのまま並べるだけでは“最適化”は生まれない。
だからこそ、今のUI設計は「作って終わり」じゃなく「出したあとどう育てていくか」まで考えて組む時代に近づいている。改善ありきの構造設計、データと連動したUIの設計力が問われている。
制作者に求められるのは、問いを立てる力
AIが見せてくれる改善ポイントや代替案は、あくまで“ヒント”に過ぎない。 最終的に「どの案がいいか」「どの指標を優先するか」を判断するのは人間の役割。特に、ペルソナやビジネスゴール、ページ全体の構造を理解した上で優先順位をつける力は、まだまだAIには難しい。
つまり、今後ますます重要になるのは、問いを立てて、仮説を持って、検証していくプロセスをリードできる人。作る・実装するだけではなく、“設計して育てる”視点がある制作者が求められている。
おわりに
AIがデザインの現場に入ってきたことで、見た目の工夫以上に“改善の回転数”が速くなってきた。
課題の発見から、提案、実装までをよりスムーズに回すために、AIの力を借りる──そんな共創スタイルが少しずつ当たり前になりつつある。
とはいえ、「最終的に何を選ぶか」は人間にしかできない。UXやUIを設計する人こそ、AIの視点を上手に借りながら、データに基づいた判断をしていくことが、これからの制作現場では求められてくる。