Webサイト制作の要件定義|小規模なコーポレートサイトで最初に整理したいこと
Webサイト制作の要件定義、何から決めればいい?
Webサイトを作ることになったとき、最初に出てきやすいのが「要件定義」という言葉です。
ただ、いざ要件を整理しようとすると、
「何を決めれば要件定義になるの?」
「制作会社に相談する前に、どこまで考えておけばいい?」
「ページ数や機能を書き出せば十分?」
と、意外と分かりづらいものです。
特に、小〜中規模のコーポレートサイトでは、大規模システム開発のような立派な要件定義書を作る必要はありません。
一方で、何も整理しないまま「会社のサイトをリニューアルしたい」と制作を始めると、途中で判断が増えたり、見積もりが変わったり、「思っていたものと違う」が起こりやすくなります。
この記事では、Webサイト制作を始める前に最低限整理しておきたい要件を、実際の制作現場で使う視点からまとめます。
この記事でわかること
- Webサイト制作の要件定義は、「何のために、誰に向けて、何を、どのような条件で作るのか」を整理すること。
- 要件定義は、制作を始める前の認識合わせであり、曖昧なままだと後で判断が増えたり見積もりが変わる可能性がある。
- 要件整理の際に重要なポイントは、目的、想定ユーザー、必要ページ・コンテンツ、必要機能、CMSと更新方法、計測と公開後の改善、スケジュール・予算・体制の確認。
- 要件定義は「絶対に変更しない仕様書を作ること」ではなく、判断を揃えるために各関係者が同じ前提に立てる状態を作ることが重要。
- 最初からすべてを決める必要はなく、「何が決まっていて、何をこれから決める必要があるのか」を整理することが重要。
Webサイト制作における要件定義とは?
Webサイト制作の要件定義は、簡単に言えば、「何のために、誰に向けて、何を、どのような条件で作るのか」を整理することです。
ここで大事なのは、いきなり「どんなデザインにするか」を決めることではありません。
たとえば、
- なぜWebサイトを作るのか
- 誰に見てもらいたいのか
- ユーザーに何をしてほしいのか
- 必要なページや機能は何か
- 誰が公開後に更新するのか
- いつまでに、どのくらいの予算で作るのか
といった前提を揃えていきます。
要件定義というと難しそうですが、要するに制作を始める前の認識合わせです。ここが曖昧なままだと、デザインや実装の段階になってから判断することが増えてしまいます。
まず「何を作るか」より「なぜ作るか」を整理する
Webサイト制作の相談では、
- 「サイトを古く感じるのでリニューアルしたい」
- 「採用ページを作りたい」
- 「CMSを入れたい」
といったところから話が始まることがよくあります。
もちろん、それ自体は問題ありません。ただ、一度その手前まで戻って考えてみます。
たとえば「採用ページを作りたい」という相談でも、
- 応募数そのものを増やしたい
- 応募者とのミスマッチを減らしたい
- 求人媒体だけでは伝えきれない会社の雰囲気を伝えたい
- 採用担当者の説明負担を減らしたい
では、必要なWebサイトは変わります。
目的が違えば、載せる情報も、必要なページも、見るべき数字も変わります。
そのため、要件を整理するときに「何を作りますか?」より先に、「それによって何を解決したいですか?」を確認する必要があります。
小規模なWebサイト制作で整理したい要件
数十〜数百ページある大規模サイトでなくても、次の項目を整理しておくだけで制作はかなり進めやすくなります。
1. Webサイトの目的
まず決めたいのは、サイトの役割です。
たとえばコーポレートサイトでも、
- 問い合わせを増やす
- サービスを理解してもらう
- 営業活動を補助する
- 採用候補者に会社を知ってもらう
- 取引前の信用確認に使ってもらう
など、目的は会社によって異なります。
すべてを同時に達成しようとすると、情報の優先順位が曖昧になります。まずは「このサイトで一番達成したいことは何か」を決めておくと、その後の判断がしやすくなります。
2. 想定するユーザー
次に、「誰が見るサイトなのか」を考えます。
BtoB企業であれば、
- 経営層
- 担当者
- 既存顧客
- 採用候補者
- パートナー企業
など、複数のユーザーが存在することもあります。
ここでも全員を同じ優先度で扱う必要はありません。
誰が、どんな状況でサイトに来て、何を確認したいのか。そこまで考えられると、必要なコンテンツが見えてきます。
3. 必要なページ・コンテンツ
目的とユーザーが見えてきたら、必要な情報を整理します。
一般的なコーポレートサイトなら、
- TOP
- 会社情報
- サービス
- 実績・事例
- お知らせ
- 採用情報
- お問い合わせ
などが候補になります。
ただし、「一般的な会社サイトにあるから」という理由だけでページを作る必要はありません。
逆に、営業時によく説明していることや、問い合わせ前によく質問されることがあるなら、それはWebサイト上に必要な情報かもしれません。
ページ構成を考えるときは、会社が載せたい情報だけでなく、ユーザーが判断するために必要な情報を見ることが重要です。
4. 必要な機能
続いて、サイト上で必要になる機能を整理します。
たとえば、
- お問い合わせフォーム
- 資料ダウンロード
- お知らせ更新
- 導入事例の更新
- 絞り込み検索
- 会員機能
- 外部システムとの連携
などです。
ここで注意したいのは、「できるから入れる」にならないこと。
機能が増えれば、制作費だけでなく、テストや保守、運用の負担も増えます。本当に目的達成に必要なのか、運用できるのかまで含めて判断します。
5. CMSと更新方法
WordPressやHubSpotなどのCMSを導入する場合は、「どこを誰が更新するのか」まで考えておきます。
たとえば、
- 「事例を社内で追加したい」
- 「お知らせだけ更新できればよい」
- 「ページそのものを自由に作りたい」
では、必要なCMSの設計がまったく違います。
CMSは導入すること自体が目的ではありません。公開後の運用方法から逆算して、必要な編集範囲を決めます。
6. 計測と公開後の改善
Webサイトは公開したら完成、とは限りません。
問い合わせを増やしたいのであれば、
- どのページが見られているか
- どこからユーザーが来ているか
- 問い合わせまでどのように移動しているか
などを確認できる状態にしておく必要があります。
GA4やSearch Consoleなどを利用する場合も、制作時点で計測方法を考えておいた方がスムーズです。「公開したあと、何を見て良し悪しを判断するのか」も要件のひとつです。
7. スケジュール・予算・体制
そして忘れやすいのが、制作条件そのものです。
- いつ公開したいのか
- 予算はいくらなのか
- 誰が最終判断するのか
- 原稿や写真は誰が用意するのか
- 社内確認にはどのくらい時間がかかるのか
こうした条件も、Webサイトの設計に影響します。
特に「誰が決めるのか」が曖昧だと、制作途中で判断が止まりやすくなります。デザインや機能だけでなく、プロジェクトをどう進めるかも要件定義の一部として考えておくと安心です。
最初から全部決まっていなくても大丈夫
ここまで読むと、「こんなに決めてから制作会社に相談しないといけないの?」と思うかもしれませんが、実際にはそんなことはありません。
むしろ、
- 目的は決まっているけれど、必要なページが分からない
- CMSを入れたいけれど、どこまで更新できればいいか分からない
- 今のサイトに問題を感じているけれど、原因が分からない
という状態で相談いただくことが普通です。
大切なのは、すべての答えを持っていることではなく、決まっていることと、まだ決まっていないことを分けることです。判断が必要な部分が見えていれば、そこから一緒に整理できます。
要件定義は「制作を縛るため」ではなく、判断を揃えるためにある
要件定義というと、「最初に仕様を全部固定する作業」のように聞こえるかもしれません。でも、Webサイト制作では、作っていく中で判明することや状況が変わることがあります。
私は、要件定義の役割は「絶対に変更しない仕様書を作ること」ではなく、なぜその判断をしたのか、関係者が同じ前提に立てる状態を作ることだと考えています。
目的や優先順位が共有されていれば、途中で変更が発生しても、「ではどう変えるべきか」を判断できます。
逆に前提が共有されていないと、小さな変更でも毎回ゼロから議論することになります。
Webディレクションでは、こうした目的・要件・制作条件を整理し、デザインや実装に渡せる状態にしていくことも重要な仕事です。
Webディレクションそのものについては、こちらの記事でもまとめています。
→ Webディレクションとは何か?──手戻りを防ぐ「判断設計」という考え方
まとめ
Webサイト制作の要件定義で最初に整理したいのは、立派な仕様書ではありません。
最低限、
- なぜ作るのか
- 誰が使うのか
- 何を伝えるのか
- どんな機能が必要なのか
- 誰がどう運用するのか
- 公開後に何を確認するのか
- どんな体制・条件で進めるのか
が見えていれば、制作はかなり進めやすくなります。
そして、最初からすべて決まっている必要もありません。
「何が決まっていて、何をこれから決める必要があるのか」。そこを整理することが、Webサイト制作における要件定義の最初の一歩だと考えています。