制作会社名義でサーバー契約は危険?中小企業が知るべきリスクと解決策
はじめに
「ホームページのサーバー契約は制作会社に全部お任せ」
そんな中小企業は少なくありません。社内にWeb専任の担当者がいない場合、制作会社に丸ごと任せられるのは便利ですし、余計な手間も省けるように思えます。
しかし実際には、その“便利さ”の裏に大きな落とし穴が潜んでいます。今回、ある企業で「WordPressの管理画面に入れない」というトラブルが発生したことをきっかけに、制作会社名義での契約が抱えるリスクが改めて浮き彫りになりました。
この記事では、実際の事例を交えながら、制作会社名義の契約で生じる問題点と、望ましい契約のあり方、そして今後の対応策について解説します。
制作会社名義でサーバー契約する背景
なぜ多くの中小企業で制作会社名義の契約が当たり前のように行われているのでしょうか?
1. 社内にWeb専任担当がいない
多くの中小企業では、Webサイトの管理を専門に行う担当者がいません。総務や広報が片手間で担当していることも多く、専門知識が求められるサーバー契約や管理を自分たちで行うのは難しいと感じるのです。
2. 制作会社にとっての効率性
制作会社から見ても、複数のクライアントを一括で自社名義で契約・管理した方が効率的です。契約更新やサーバー設定をまとめて対応できるため、業務負担を軽減できます。
3. 「契約形態を意識しない」まま始まる
発注側も制作会社側も「とりあえず任せておけば安心」という認識でスタートするため、契約名義の重要性を意識しないまま運用が続いてしまうケースが多いのです。
実際に起きた事例:管理画面に入れない!
今回の事例では、WordPressの管理画面(wp-admin)にアクセスできなくなるトラブルが発生しました。
- ログインができず、サイトの更新作業が止まる
- 契約名義が制作会社のため、自社で直接サーバー会社に問い合わせても対応してもらえない
- 制作会社経由でしか状況確認や復旧依頼ができず、対応が遅れる
結果として、サイト更新やセキュリティ対策が滞り、業務や情報発信に大きな支障が出ました。
このように、契約名義が自社にないだけで、トラブル時に身動きが取れなくなるのです。
契約形態ごとのメリット・デメリット
制作会社名義
メリット
- 契約や更新手続きが不要
- 専門知識がなくても任せられる
デメリット
- 自社に権限がない
- 解約・移管が困難
- トラブル時に迅速に対応できない
自社名義+制作会社が運用代行
メリット
- 契約・権限は自社にあり安心
- 運用は制作会社に任せられるため負担は軽減
デメリット
- 契約時の手続きや支払いは自社で対応する必要がある
「ラクさ」という一時的なメリットと引き換えに、トラブル時のリスクは想像以上に大きい――。
ここが最大の問題点です。
本来あるべき契約の形
中小企業が安全にWebサイトを運用するためには、サーバーやドメインは必ず自社名義で契約することが基本です。
制作会社はあくまで「運用を代行する立場」。契約と運用を切り分けることで、以下のような安心感が得られます。
- 契約権限が自社にあるため、万一のトラブル時にも主体的に動ける
- 制作会社との契約終了後も、サイトをスムーズに引き継げる
- 会社の資産としてのWebサイトをきちんと守れる
今後の対応策
もし現在、制作会社名義でサーバー契約をしている場合、次のステップを検討することをおすすめします。
1. 契約名義を確認する
まずは、現在利用しているサーバーやドメインが誰の名義になっているかを確認しましょう。
2. 名義変更を検討
制作会社との関係が良好であれば、名義を自社に譲渡してもらうことが可能な場合もあります。
3. 新サーバーへの移設
名義変更が難しい場合は、自社名義で新たにサーバー契約を行い、サイトを移設する方法があります。この場合も制作会社に移行作業を依頼することは可能です。
まとめ:自社名義にしておくことの重要性
サーバー契約を自社名義にしておくことは、会社にとっての資産を守る第一歩です。権限を持つことで、トラブルや契約終了時にも安心して対応できます。
実際に今回のケースでも、メリットよりもデメリットが大きすぎると判断し、制作会社に名義の譲渡を提案しました。このように契約形態を見直すだけで、将来の大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
ポイントは「丸投げ」ではなく「役割分担」。
自社名義で契約し、制作会社に運用を任せる体制を整えることが、中小企業にとって最も安全で安心な方法です。