読まれない前提で伝える──“拾われる情報設計”のUX視点
どれだけ丁寧に文章を書いても、それが最初から最後まで全部読まれるとは限りません。
むしろWebでは、「ほとんど読まれない」のが普通だと考えたほうが現実的です。
UXの視点で見ると、Webコンテンツは「読みもの」というより、情報を取りに来る場所です。
ユーザーは物語を楽しみに来ているというより、「答え」や「ヒント」を探しています。
だからこそ、読まれる前提で書くのではなく、読み飛ばされる前提で設計することが、結果的に“伝わる”コンテンツにつながります。
この記事でわかること
- Webコンテンツは情報の供給源であり、読まれる前提ではなく情報を拾わせる設計が重要
- ユーザーは情報をスキャンし、テキストをかたまりとして処理する
- 情報を拾わせる設計では、段落構造や視覚的リズムを工夫し、見出しは内容に即したものであるべき
- ストーリーテリングや情報の分割展開などを活用して、ユーザーの関心を維持し、読了のハードルを下げる工夫が必要
- 読まれない前提で情報を届けるためには、ユーザーの行動や視線を考慮し、伝えたい内容を絞り抜く必要がある
- UXとしての文章設計は、読まれない中でも情報を届けることに焦点を当てることが重要である。
ユーザーは、最後まで読んでくれるとは限らない
ユーザーがWebページを開いたときに求めているのは、「全文をじっくり読むこと」ではありません。
- スクロールしながらざっと眺めて
- 見出しや太字で気になるところに目を止めて
- 必要な部分だけを拾い読みする
これが、Web上ではごく当たり前の行動です。
「せっかく書いたんだから全部読んでほしい」という気持ちは自然ですが、それを前提にしてしまうと、UXとしてはズレてしまいます。
読まれないことが前提のWeb体験
では、なぜ読み飛ばされるのでしょうか。
- 情報量が多すぎる
- 自分に関係ない話が先に出てくる
- 目的の情報にたどり着くまでが面倒
こうした要素が重なると、ユーザーの集中力は一気に削られます。
「情報はちゃんと載せているのに、伝わっていない」
これは内容の問題というより、UXの損失です。
ユーザーは文章を「読む」のではなく「スキャンしている」
ユーザーは、文章を一文ずつ丁寧に追っているわけではありません。多くの場合、テキストをかたまりとして流し見しています。
視線は斜めに動き、目立つ見出しや強調部分だけを拾っていく。
いわゆるF字型・Z字型と呼ばれる視線パターンが示す通り、文章は順番に読まれるものではなく、「目に入った順」「気になった順」に処理されています。
「読ませる」より「拾わせる」設計へ
段落構造と視認性を整える
まず意識したいのは、文章のかたまり方です。
- 1段落は3〜4行程度で区切る
- 重要なことは最初に書く(逆三角形型)
- 主語と述語を離しすぎず、装飾的な言い回しは減らす
1ブロック=1メッセージを意識するだけで、読み飛ばされても要点が残りやすくなります。
太字・箇条書き・余白で視覚のリズムをつくる
人の目は「変化」に反応します。
- 箇条書きで情報を整理する
- 本当に重要な言葉だけを太字にする
- 段落の間に適度な余白を入れる
こうした視覚的な起伏があるだけで、流し見の中でも、情報が引っかかりやすくなります。
これは内容以前に、「まず目に入る状態をつくる」ための調整です。
コンテキストを裏切らない見出し設計
見出しは、ユーザーにとってのナビゲーションです。
「気になって読んだのに、思っていた内容と違った」
この体験は、信頼を一気に下げてしまいます。
- 見出しと本文の内容を一致させる
- あいまいな表現は避ける
- 結論や要点となるキーワードを含める
読み飛ばされながらも、正しく導く。その役割を担うのが、見出しです。
それでも「どうしても読んでほしい」ときは
感情を伴うストーリーを使う
体験談や失敗談など、人の感情が乗った話は、続きを読みたい気持ちを引き出します。
情報として説明するのではなく、「誰かの声」として語ることで、関心をつなぎやすくなります。
読了のハードルを下げる工夫
- セクションを細かく分けて区切りをつくる
- アコーディオンなどで情報を折りたたむ
- 冒頭に要点をまとめる(TL;DR)
「読みやすい」だけでは不十分で、構造として迷わないことが重要です。
最後に:読まれなくても届く設計を考える
すべてを読ませようとするよりも、「読まれない中で、どう伝えるか」を考えることが、UXとしての文章設計です。
ユーザーの行動を前提にして、視線の動きや思考の流れを想像しながら、それでも伝えたい情報を削ぎ落としていく。
読み飛ばされるのが当たり前のWebだからこそ、拾われる形で届ける。
それが、コンテンツを設計するということだと思います。