コーディングはAIでどう変わる？Web制作に求められる新しいスキルと視点

ChatGPTやGitHub Copilotなど、いわゆる「AIツール」を実務で使ってみた人なら感じているかもしれないが、コーディングの風景が確実に変わりはじめている。

「CSSの細かい調整に時間がかかる」「Laravelでルーティング組むの地味に面倒」──そんな日々の“ちょっとしためんどう”を、AIが肩代わりしてくれるようになったことで、手の動かし方にも、思考の向け方にも変化が出てきた。

ただ、便利さの裏で「全部AIに任せる」のは少し違う気がしていて。 この記事では、そんな葛藤も含めて、“実際にAIを使ってみたコーダー・制作者の目線”から、コーディングの現在地とこれからを整理してみる。

「書く」から、「選ぶ・整える」へ

HTMLやCSS、簡単なJavaScriptなんかは、もう自然言語で指示すればだいたい書けてしまう時代。ヘッダー作って、カードレイアウトにして、PCとSPでレスポンシブ対応……といった構造も、それなりにきれいな形で返ってくるようになった。

とはいえ、そのまま使えるかというと別の話。命名が適当だったり、再利用しづらかったり、チームのルールに沿っていなかったり──。

「それっぽいもの」は出てくるけれど、「プロジェクトに適したコード」にするには、誰かが“整えてあげる”必要がある。この“整える”という工程こそが、今の自分たちに求められているコーディングスキルなんじゃないかと思う。

AIに聞く力＝プロンプト設計力

AIを使ってみると、最初のうちは「思った通りに動いてくれない」という場面がけっこう多い。

実はそれ、AIのせいじゃなくて、指示がふんわりしているだけということが大半。

「このページに表示する一覧は5件で、SPでは横スクロール、PCでは2列」など、設計意図を丁寧に伝えると、驚くほど狙い通りのコードを出してくれる。

そのため最近は、「うまく書けるか」よりも「うまく伝えられるか」の方が重要で、コードを書く前に、構造を言語化して説明する力＝プロンプト力がコーディングの成果に直結していると感じている。

加えて、前後のコードや関連するファイルを一緒に提示したうえで聞き直すと、構造を理解して返してくれることもある。つまり、“1回で正解を引き出す”よりも、“対話の中で精度を高めていく”姿勢が大事になってきている。

改修・追記はAIの苦手分野

新規で何かを作るときは頼りになるAIだけど、既存のコードを読み取って改修する──という作業になると、まだまだ厳しい。

例えば、コンポーネントが細かく分かれているReactアプリや、SCSSの構成が少し特殊な案件などでは、「どこをどう直せば整合性が取れるのか」をAIが理解しきれない場面が多々ある。

つまり、全体の構造や意図を読んで動けるのは、まだまだ人間の役割。 「この修正、影響範囲広いからテスト書いたほうがいいな」みたいな“勘”も含めて、プロジェクト全体を把握できる人の存在が欠かせない。

テストやエラー対応は“相棒”として頼れる

とはいえ、AIが心強い相棒になってくれる場面もちゃんとある。

ユニットテストの雛形作成、想定ケースの洗い出し、リントで引っかかったエラーの説明など、「調べれば分かるけど地味に時間がかかる」ことに付き合ってもらえるのはありがたい。

「なんか変な動きしてるな……」と思った時、AIにコードを投げて「どこが怪しいと思う？」と聞くと、たまにハッとする指摘が返ってくるのもおもしろいところ。

これからの“書ける人”って？

以前は「コーディングができる＝手が早い、知識がある」みたいな評価軸だった。でもこれからは、

• 書く前に、構造を考えて言語化できるか
• AIが出したコードを読んで整えられるか
• 他の人のコードも含めてレビューできるか

といった、より“設計寄り”で“対話的なスキル”が求められるように変化していると感じる。

「とりあえず手を動かして、動いたからOK」ではなく、「なぜそれをその書き方にしたのか？」を説明できること。それがこれからの”書ける人”の定義になるのかもしれない。

おわりに

まだまだ頼りきれない場面は多いけれど、「あ、今のはAIに聞いたほうが早いな」と思える瞬間があるだけでも、作業のストレスは確実に減っている。

これから先、コーディングという仕事が「どこまで人がやるのか」「どこからAIに任せるのか」は、自分たちのスタンス次第。道具としてAIを使いこなすために、もう少し“考える力”に比重を置いてみてもいいのかもしれない。