「保守しやすいコード」とは?現場で差がつくコーディングの基本
「保守性」があるコードが、現場でいちばん助かる理由
Webサイトは、公開したら終わりではありません。
むしろ本番公開はスタート地点で、その後に更新・修正・追加対応が延々と続いていきます。
しかもその作業をするのは、最初にコーディングした本人とは限らないケースがほとんどです。
- クライアント自身が触る
- 別の制作会社に引き継がれる
- 数年後、自分でさえ記憶が薄れている
こうした前提があるからこそ、Web制作の現場では「保守性」がとても重要になります。
保守性が高いコードとは、ざっくり言えば自分以外の誰かが触っても、破綻しにくいコードのことです。
この記事でわかること
- 保守性が重要で、他の人が修正や更新を行うことを前提にしたコーディングが求められる
- HTMLの保守性を高めるために、セマンティックなタグを使い、インデントやコメント、命名ルールを統一する
- CSSの保守性向上のために、SCSSを活用してファイル分割や責務の明確化を行う
- JavaScriptではHTMLと疎結合に保つようにし、関数化・分離、ライブラリの選定基準を持つ
- コーディングルールやレビュー文化、ドキュメント整備が重要であり、Lint・FormatterやGitHubでのコードレビューを取り入れることが有益
- コーダーはデザイン再現だけでなく、運用しやすさを意識した実装に取り組むことが重要である
なぜ「自分以外が触る前提」が必要なのか
実装直後は、誰でもこう思いがちです。
「今ちゃんと動いてるから大丈夫」
「この構造、あとで自分が直せば分かる」
残念ながら現実は、だいたいその通りにはなりません。
- 数か月後、急な修正依頼が来る
- 担当が変わる
- 仕様が増える
- CMSで想定外の更新をされる
このとき、コードが読みづらい・構造が分かりにくいと、一気に破綻します。
だからこそ、「自分以外が触る」「未来の自分が忘れている」この2点を前提にした実装が必要になります。
保守しやすいHTMLは「意味が伝わる」
セマンティックなタグを使う理由
HTMLは、見た目を作るためだけのものではありません。
「この要素は何なのか」を伝えるための構造でもあります。
div と span だけで組まれたHTMLは、後から見ると本当に何が何だか分かりません。
<header>
<nav>
<section>
<main>
<footer>
こうしたセマンティックなタグを使うことで、
- 構造が直感的に分かる
- アクセシビリティが向上する
- 修正時に迷いにくい
というメリットが生まれます。
インデント・コメント・構造は「未来の人」への配慮
インデントがバラバラだったり、どこで何が終わっているか分からないHTMLは、触る側にとってかなりのストレスです。
- インデント幅を揃える
- セクションの区切りにコメントを入れる
- 深くなりすぎない構造を意識する
これだけでも、保守性は大きく変わります。
命名ルールは「思考の共有」
クラス名は、実装者の思考がそのまま出る部分です。
だからこそ、命名ルールを決めておくことが重要になります。
個人的には、BEM記法が便利だと思っています。
<div class="card card--featured">
<h2 class="card__title">タイトル</h2>
<p class="card__description">説明文</p>
</div>
この書き方だと、
- どの塊(Block)なのか
- どの要素(Element)なのか
- 状態(Modifier)は何か
が一目で分かります。
「読む人に考えさせない」命名は、立派な設計です。
CSSは「増える前提」で設計する
SCSSは保守性の味方
CSSは、気を抜くとすぐにカオスになります。
だからこそ、SCSSなどのプリプロセッサを使って、
- 変数
- ミックスイン
- ファイル分割
を前提に設計するのがおすすめです。
役割ごとにファイルを分ける
たとえば、こんな分け方です。
_variables.scss:色・フォントサイズ_mixins.scss:共通処理_components.scss:UIパーツ_layout.scss:レイアウト制御
「どこを直せばいいか」がすぐ分かる構成は、それだけで保守性が高いと言えます。
ユーティリティとパーツは混ぜない
余白や文字サイズなど、
汎用的なものはユーティリティクラスに。
それ以外は、
コンポーネント単位で管理する。
この線引きをしておくだけで、
CSSの肥大化はかなり防げます。
IDとclassは役割を分ける
CSSでIDセレクタを多用すると、あとで本当に苦労します。
/* NG */
#header {
background: red;
}
IDは特異性が強すぎて、上書きが難しくなるからです。
基本ルールはシンプルで、
- 見た目 → class
- JSやアンカー → ID
再利用する可能性があるなら、迷わずclassを使います。
JavaScriptは「HTMLに依存しすぎない」
疎結合を意識する
DOM構造にガチガチに依存したJSは、HTMLを少し変えただけで壊れます。
data-属性を使う- JS専用のclassを用意する
こうした工夫で、影響範囲を限定できます。
処理は分けて、名前をつける
無名関数が増えてくると、あとから読んだときに地獄です。
- 処理は関数化する
- 役割ごとに分ける
- 名前をつける
「動く」より「読める」を優先した方が、結果的に修正は早くなります。
CMS前提なら「更新者の顔」を想像する
WordPressなどのCMSを使う場合、実際に触るのはエンジニアではないことも多いです。
- テキストは管理画面から
- 画像も差し替え可能に
- HTML直書きは極力避ける
更新者が迷わない設計は、トラブル防止にも直結します。
パーツは小さく、再利用前提で
ボタン、見出し、画像+テキスト。
よく使う構成ほど、コンポーネント化しておく。
これは運用フェーズで、本当に効いてきます。
よくあるNG実装は、だいたい後で困る
!importantの多用- 深すぎるセレクタ
- IDセレクタだらけのCSS
- DOM構造に依存したJS
これらは「今は楽」でも、あとで必ずツケが回ってきます。
実装中に一度、「これ、半年後の自分が見て分かるかな?」と立ち止まるだけで、防げることが多いです。
ルールとレビューは「チームの保守性」
保守性は、コードだけの問題ではありません。
- Prettier / Stylelint で自動整形
- GitHubでのレビュー
- READMEやNotionでのルール共有
こうした仕組みがあるだけで、属人化はかなり減らせます。
「見た目が合っていればOK」ではなく、変更しやすいかどうかも評価軸に入れたいところです。
まとめ:コーダーの仕事は「未来を楽にすること」
保守性の高いコードは、必ずしも一番派手ではありません。
でも、
- 読みやすい
- 変更しやすい
- 引き継げる
この3点を満たす実装は、現場では本当にありがたい存在です。
デザイン再現だけで終わらせず、「このあと、誰がどう使うか」まで考える。
その視点こそが、長く使われるWebサイトを支える品質だと思っています。